杉本純のブログ

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心理収入

本多信一『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)は、ちと古い本だがとてもためになる。

ここで言う「内向型人間」とは、今なら「繊細さん」に該当するのではないかと思えるが、そういう人でもきちんと仕事をして世の中の役に立ち、かつ(ある程度の)成功を手にすることができることが書かれている。内向型人間の特徴や性向、弱点はもちろん、その行動の仕方についてもとても引いた目で書かれており、見晴らしがいい。

著者の本多さんは現在は八十歳になるが、私は本書を読んでご本人と話してみたいと思った。こんな思いを持つのは久しぶりである。

さてその中に、ある大手銀行に勤める東大出の人物のエピソードが載っている。その人は内向型の人間だが、頑張って勤めたようで、管理職になって妻子もできた。しかし、どうやら本人は教育や福祉や宗教の方面に向いていたらしく、管理職になったもののやはり銀行を辞めることになり、貧乏を覚悟で自宅で塾を開くことになった。

私はこれで良かったのだと思った。教える仕事は、勉強好きの東大出の人にはピッタリだ。その収入は銀行員の管理職と比べたら、当然低くなることだろうが、“心理収入”は増加する(後略)

「心理収入」という言葉が印象的で、初めて見た言葉だがいいなぁと思った。お金は大事だが、心理収入はそれと同等か、あるいはそれ以上に大事だろうと思う。やはり人間、やりたいことをやって生きていくのがいい。