杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

ボランティア雑感

新しい縁の形

金子郁容『ボランティア』(岩波新書、1992年)を読んでいます。

人助けとか無償の奉仕活動をして良い気分になりたい、というわけでは全然ありません。ボランティアに興味が湧いたのは、先日、地元で一日だけのボランティアに参加したのを機に、本書のサブタイトルである「もうひとつの情報社会」というキーワードが頭に浮かんで、面白いなぁと思ったのです。

本書の趣旨は、情報洪水の中で無力感や焦燥感に包まれる現代社会にあって、ボランティアはそれを変える手掛かりになるかもしれない、というものです。つまりボランティア活動とそのネットワークが「もうひとつの情報社会」ということだと思います。

昔はそれほどではありませんでしたが、情報洪水や、それゆえの焦燥感を変える「もうひとつの情報社会」などのキーワードが、今は面白いと思えるようになりました。

ちなみに著者の金子郁容については、私は松岡正剛さんを通して知っていました。本書は「千夜千冊」でも取り上げられていますし、かなり以前に『インターネットストラテジー』(ダイヤモンド社、1995年)という松岡さんと金子と吉村伸という人による鼎談本も読んでいました。

単なる慈善活動とは違う意味と価値が、ボランティアにはある。そういう認識が私の内部にできあがると共に、仕事でボランティアを取材することがけっこうありました。また、曽野綾子を通してキリスト教に関する本を読んだり、本多信一さんの本を読み、本多さんが主に「内向型人間」のために無償で職業相談にのっているのに知ったりして、奉仕が当たり前のことのように感じられるようにもなった。「もうひとつの情報社会」の存在が、納得感をともなって実感できるようになっていたのです。

血縁、地縁、社縁などとは異なる新しい「縁の形」。その一つがボランティアかもしれない、と最近は思っています。