杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

佐伯琴子『狂歌』

第10回日経小説大賞受賞作の佐伯琴子『狂歌』(日本経済新聞社、2019年)を読んだ。

福岡のフリーペーパーで働く女が、過去に一夜を共にした男に誘われて仮想通貨の取引所の社長になるが、不正を行ったことが明るみに出て閉鎖となる。男は死んだとされるが実は生きている。男の家は、かつて九州の中央部あたりの山深い街で金山事業を展開し、その金を元手に東京で料亭を開いた。男と父親には、男の恋人を巡る確執がある。女とその母親は男の一族と関係があり、女は男の父親への復讐心もあるのだが、男と関わる内に恋心を抱くに至り、クライマックスは男を追って海外に行こうとする。それは果たせないのだが、最後は海外にまで追いかけて行く。そして、男と女は実は腹違いの兄妹だった、ということが明かされる。

フリーペーパーとか仮想通貨とか金山とかがまぜこぜごった煮になった小説で、実にこってりとしている。