杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

あらすじ執筆の効用

小説の構想段階で陥りやすいのが、背景世界の作り込みで、ディテールにはまり込んでしまうことだ。誰もが陥るとは限らないが、かくいう私自身がしばしば陥るのである。

主人公はどこ出身で、その土地にはかつて誰がいて何が起こって、どんな伝説があって、などなどなど、考えれば考えるほど背景世界は豊かになるので、止まらなくなるのである。しかし、肝心の小説そのもののストーリーは決まってこず、こんなんじゃいかん、と軌道修正を迫られる。そういう経験をした人は、私だけではないのではないだろうか。

ディーン・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』(大出健訳、朝日文庫、1996年)を読むと、クーンツがどうやらプロットを第一に考えているらしいことがわかる。この場合のプロットというのは、要するにこの小説はどんな話か、どこの誰が、誰と何をして、どうなるのかという、「おはなし」の大雑把な全体像を説明するものではないかと思う。

つまり「あらすじ」と似たようなものだろう。それはディテールをすっ飛ばし、小説家の腕の見せどころである細緻な描写部分など目もくれず、ひたすら「どんな話なのか」を説明する。これをまとめると、書こうとしている小説の流れが見えてくる。だから、ディテールにはまり込んでしまう人は、まずはあらすじを書くと良いのではないか。弱いと思った部分は、背景世界をつくって補強するなり改変するなりすればいい。そしてまたディテールの沼にはまったら、再びあらすじをまとめれば良いだろう。いや…私自身が小説を構想していて、そう思ったのだ。