杉本純のブログ

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ライターと作家3

ライター業に従事する人の中には、将来は小説家になりたいと考えている人がけっこういる気がする。これまで何人か、そういう人を見た。「文章を書く」行為がライターと小説家に共通するのでそう考えるのかも知れない。

かく言う私も、小説家を志望しつつライターをやっている。が、ライターの延長線上に小説家があるとは思っていない。両者はまったく別の仕事だと思っているからだ。ライターの延長線上にあるのは、編集者(発注される側から発注する側に回る)、専門ライター(どんな種類のライター仕事でも引き受けるところから、専門的かつ高度で高単価な仕事を受けるようになる)の二つくらいだろう。ライターから小説家になるのは、ライターとは違う道に進むようなものか。…いや、というよりも、おおよそいかなる仕事の人でも小説家になれる可能性があるのだから、ライターもその一つに過ぎない、ということかと思う。

冒頭に述べた、小説家をライターの延長線上の仕事のように捉えて、まずライターになるような人は、人生の大きな遠回りをしてしまっているのかも知れない。いや、小説家になるのに近道も遠回りもない、いかなる経験も小説を書く上での糧になるのだ、と言えばその通りだが、ライターなどやらずフリーターでもやっていれば、小説を書く時間を多く作れるに違いなく、デビューの確率も相対的に高くなるような気がする。あくまで、相対的に、である。そして、小説家として行きていくには、なるべく早く小説家になってしまう方が、相対的に、良いのではないか、とも思う。

そのことを踏まえた上で、遠回りをしている人のことを考えると、やはり「書く仕事」という共通項が、遠回りの原因なのではないか。これがあるからこそ、ライターと小説家を同種の線上に置いてしまうのではないか。

論理的な文章やストーリーテリングを学ぶというなら、まずライターをやるのも頷ける。私がライターを選んだ理由には、ちょっとそういうところがあった。けれども、論理的に「書く仕事」やストーリーを考える仕事はライター以外にもいっぱいあるのも事実だろう。