杉本純のブログ

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企業研究者と勤め人ライター

鎌谷朝之『企業研究者のための人生設計ガイド』(講談社ブルーバックス、2020年)は、図書館で見つけてぱらぱら読んだ。

面白かったのは第3章「企業で研究するか、大学で研究するか?」で、そこには企業に勤めて研究に従事する者のメリットとデメリットが載っている。

メリット
①大学と比べると給料が高いことが多い。
②組織として多くの資金を持ち、優先順位の高い領域にはたくさんの人材が投入される。
③研究成果が製品やサービスなど目に見える形で世の中に提供される。

デメリット
❶研究テーマは基本的に会社が決める。
❷組織やチームの一員として研究活動に従事することが求められ、研究成果を独占することはできない。
❸研究の優先順位は多くの外的要因によって変わってしまうため、何年も同じテーマについて取り組むことは難しい。

上記を読んで、何だかフリーライターと勤め人ライターの違いに似てるなぁ、と感じた。

ここでは研究者を「企業」に属するか「大学」に属するか、で分けているが、ライターが大学に勤めることはたぶん一般的にはない。だから私としては「大学に勤める研究者」をフリーのライターに例えたことになるが、似ていると思ったのは「企業研究者」と「勤め人ライター」である。

まず①だが、勤め人ライターはフリーのライターより相対的に収入が安定していると思う。フリーでバンバン稼ぐ人はいるが、安定性と、相対的な高さで言えば、勤め人ライターの方が良いのではないか。②③は、特に勤め人とフリーの違いはないと思うが、❶は①と同様、ライター仕事の題材は勤め人なら勤め先から与えられ、仕事を選ぶことはできない点が似ている。フリーも状況によっては仕事を選べずがむしゃらに働くことになるだろうが、基本的には仕事を選べる。❷は、ライターは企画の一部を担うに過ぎないので、これは勤め人でもフリーでも同じだと思う。❸も、ライターである以上、勤めていようがフリーだろうがまず同じだろうけれど、自分が気になる題材について長い時間をかけて取り組む、といったノンフィクション作家のような活動は、フリーの方がやりやすいのではないか。

研究者でもライターでも、自分が求めるテーマを追求するとなると、企業という枠から出て活動しなくてはならない、ということだろう。