杉本純のブログ

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企業小説

松本清張『風紋』(光文社文庫、2018年)を読んでいる。

食品会社に勤める主人公が社史編纂の業務に従事することになり、その制作を進めるが、その傍らで自社商品の不穏な情報が浮上する、という企業サスペンス小説。

この小説を読んでみたいと思ったのは、自分が身を置く境遇がこの小説の主人公にやや近いからだ。私は会社勤めをしながらライター職を務めていて、顧客あるいは自社の企業の内情に触れる機会が少なくない。社史編纂の仕事にも間接的に関わったことがあり、その意味でも『風紋』の舞台は遠からぬ世界だと考えたのだ。

企業が展開する事業とは、世の人びと、あるいは世の企業や団体などにある「価値」を提供して利益を出す取り組み、と言える。その価値が、世の多くの人が求めるものであれば、それをもたらす商品やサービスの売れ行きは当然伸びる。多くの人が求めないものであれば、その逆の結果になる。その点に、事業を企てる実業家の一種のロマンがあるだろうと思うし、その挑戦の軌跡は一つのストーリーにもなるだろう。大企業の創業ヒストリーなどが一遍のドラマになったりするのは、連続テレビ小説をはじめとして、よくある。

最近、ある企業小説を考えている。その意味でも『風紋』からは得ることがあると思っている。