杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

本との不思議な縁

本というのはたいてい、その中で別の本について言及しているもので、そういうことからも読書は連鎖するのである。そういう例は、思い出すこともできないほど多過ぎて普通のことになっている。最近なら、佐伯一麦の随筆を読んで小池真理子の『無伴奏』につながる、といったことがあった。他に佐伯一麦の著作関連では、書名を直接言及されていなくても、ウェルギリウスの『牧歌』やヴェルレーヌの「偶成」に辿り着くこともあった。

先日、立花隆『「知」のソフトウェア」(講談社現代新書1984年)を読み、フローベールの『ブヴァールとペキュシュ』に触れている箇所があったので、面白そうだから読んでみようかなと思った。しかし、それから月日が経ってしまい、すでに忘れかけていたのだが、このほど北村薫『空飛ぶ馬』(創元推理文庫、1994年)の「砂糖合戦」で、「私」がバッグから文庫本の『ブヴァールとペキュシェ』を取り出す場面があり、おお、また会った!と思った。それで、これはもうご縁だな、と思い、この本を読むことにした次第である。

ちなみに、立花著では『ブヴァールとペキュシュ』と書いているが、「砂糖合戦」の方は『…ペキュシェ』になっている。正しいのは「シュ」か?「シェ」か? 本書は複数の出版社から出ているが、どれも「シェ」である。