杉本純のブログ

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「たった一人」

『作家の履歴書』(角川書店、2014年)は、娯楽作家たちの苦労話を多数収録したものだが、その中に北方謙三先生がいる。こんなことを書いている。

作家というのは大勢の読者に向けて書いちゃいけない。たった一人に向けて書く。顔も見えない、だけど孤独だけは共振できる一人に向かって孤独を投げるんです。十万部売れたとしたら、たった一人が十万人いるということです。

作家が孤独な作業だというのは分かっていたが、「たった一人に向けて書く」というのが感覚的によく分からなかった。けれど、最近はちょっと分かった気がする。

「たった一人」というのは、自分が孤独を共振できる相手であり、それだけの仲の人になると思う。そういう相手がいるかどうかが、作家としてやっていく上では大事なのかも知れない。