かつて仙台に「田園」という喫茶店があり、脚本家の内館牧子が叔父から経営をやってみないかと誘われたもののクラシックが苦手なので断念したが、その店は佐伯の人生の分岐点の舞台の一つだったのだ。
そのことは、『月を見あげて』(河北新報出版センター、2013年)の「名曲喫茶『田園』」に書いてある。そこでは佐伯は内館と対談したと書いているのだが、その対談は恐らく「潮」640号(2012年6月)の「対談 東北の『故郷(ふるさと)』を取り戻すために」だろう。ちなみに「名曲喫茶『田園』」の初出は河北新報2012年4月13日夕刊である。
内館には『二月の雪、三月の風、四月の雨が 輝く五月をつくる』(潮出版社、2012年)というエッセイ集がある。これは読売新聞宮城県版に2003年5月から2011年12月に掲載された「内館牧子の仙台だより」を改題、加筆修正したものだが、その中の「『伝説の喫茶店』を継ぐはずが……」に田園のことが書かれている。
内館はクラシックが苦手だったそうだが、演歌ならなんでもござれだったらしい。また計算が弱く、接客や商品提供も下手だったようだ。脚本を書く人がこのように実務では鈍くさかった、というのは、私には大いに共感するところがある。。
さて「『伝説の喫茶店』を継ぐはずが……」は雑誌『Kappo』の「大人のためのくつろぎカフェ」という特集を切り口にしているが、佐伯は『Kappo』に連載を持っていて、それは『杜の日記帖』(プレスアート、2010年)にまとめられている。