ある小説家の年譜づくりをしている。その作家は存命で、私の他にも研究者がいてある程度の年譜はできているが、もう十年以上更新されておらず、私が取り組む価値は十分にあると思う。さらに、他の研究者が作った年譜は詳細には違いないが、もちろん抜けもあるし、典拠不明の項目もあったりするので、調べがいがある。当然ながら先行研究には一切頼らず、その作家の随筆や手記を読んで一から年譜を作るのである。
詳細年譜が一冊の本になっている作家は複数いるはずだが、私は中でも川端康成の詳細年譜がすごいと思っている。あれほどの仕事ができれば、と思うが…どうだろう。粘り強く取り組んでいかなくてはなるまい。また、今は映像資料もあるし、川端の時代よりメディアの種類は相対的に多いと思われ、昔よりも調べる範囲が広くなっているだろう。そのぶん大変だと言えるが、昔は昔でネットもないことだし、資料にアクセスすること自体がそう容易ではなかったんじゃないかと想像する。