杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

伝記研究は探偵行為

ある小説家の研究をしているのだが、最近、事実追究の取り組みがだんだん探偵のようになってきた。。

私がやっているのは伝記的な研究で、その小説家が住んでいた場所、作品に出てきた街などを、当人の生い立ちを辿りつつ、それと結びつけていくもの。つまり、小説家に関する詳細な年表と地図を作ろうという試みである。その小説家は東京や神奈川に住んでいたこともあり、当時のことを調べれば調べるほど、小説家の生きた時代と小説家の生き様みたいなものが見えてきて面白い。

研究の過程ではもちろんレファレンスサービスを利用する。これは知りたい情報をピンポイントで教えてくれるのでたいへん助かっている。これまで何度もこのサービスで有力な情報を得てきた。

もちろん分からないことも多い。特にこの小説家の研究で苦戦しているのは、若い頃に住んでいた場所や勤めていた会社のことで、別の研究者が作った年譜や小説家の私小説作品、随筆の記述などを頼りに調べていくのだが、先行研究以上に詳しいことが分からない。どうして先行研究以上のことを調べようとするのかというと、やはりその研究に私が不満だからだ。で、さらに詳しく調べる。具体的には、年譜や作品に登場する、小説家本人が住んでいた場所の地名や、勤めていた会社の名前について調べ、具体的な所在地などをはっきりさせるのである。これが難しい、というか、大変だ。

レファに頼っても歯が立たないとどうするかというと、先行研究や作品の記述を頼りに推理をして、当時のゼンリン地図を開き、推測した辺りを舐めるように見て目的の名前を探す。気が遠くなるような作業だが、私はこれで小説家がかつて住んでいた住所とアパート名と号室まではっきりさせたことがある。ちなみに、その小説家の私小説には主人公が住んでいるアパートの周囲の情景が描かれていて、その記述内容が、地図を調べて確認したアパートの周囲の状況と酷似するのだ。その事実を発見した時は、もう飛び上がりたくなるくらいに嬉しくなった。

伝記的な研究は、しばしばそういう探偵のような調査追究になる。過去の情報やレファから得た情報は、言わば「点」だ。いくつもの点をつなぎ合わせて「線」にするには推理力が必要で、巧く線が描けた時は楽しい。これを繰り返して、線から「面」を描き出せれば、その時は一冊の本にまとめられるのではないかと思っている。