杉本純のブログ

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「水面上」のフィクションと「水面下」のフィクション

宮原昭夫『書く人はここで躓く!』(河出書房新社、2016年増補新版)を久しぶりにぱらぱら読んでいたら、肝に銘じたい箇所が。

 ノンフィクション、つまり「削る」フィクションの秘訣は「十調べて一書く」ということだ、と申し上げましたが、同じように、小説のような「作る」フィクションの場合にも「十作って一書く」のがコツなんですね。実際に小説の中に書く作り事が、たったの一行だったとしても、そのために頭の中では十行分くらいフィクションを作る必要があります。

私は小説を書いているとついあちこち脱線してしまい(だからちゃんとテーマとストーリーの流れは頭に叩き込むことにしている)、思いつくまま脱線してストーリーに関係ない描写とかエピソードの紹介をえんえんやってしまうことがある。そして、ただダラダラと小説がだらしなく続く、ということになる。

宮原は、小説に書かれる部分を「『水面上』のフィクション」といい、直接書かれはしないものの、書かれる部分のリアリティを支える部分を「『水面下』のフィクション」と言っている。

示唆に富む言葉だと思う。