杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

小説家の仕事

尾崎真理子が聞き手・構成の『大江健三郎 作家自身を語る』(新潮文庫、2013年)は尾崎による大江への長大なインタビューだが、末尾には「大江健三郎、106の質問に立ち向かう+α」という一問一答コーナーがある。

その五つ目の質問は「ごく普通の一日の過ごし方を教えてください。」というもので、以下のように回答している。

朝、六時~七時に起きて水を飲み、仕事を始め、午後二時くらいまでやります。朝・昼食一緒にして、たまっている郵便物を片づけ(外国語の通信への返事には時間がかかります)、本を読み始めます。七時~八時ころ光と夕食をして、その後、本を読みつづけるか仕事をするかし、十時~十一時ころ酒を飲んで、光が起きてトイレに行ったあとのベッドを整えてから寝ます。昼間、客があることはたまにあります。

特に個性的ではない気がするが、前半の仕事時間は7~8時間か。夕食後も仕事をするとしたら、けっこう長いと思った。大江がずっとこの時間割で一日を過ごしていたはずはないと思うが。

九つ目の質問は「小説の設定や筋は、たとえばどのような時にひらめくのでしょう。」で、深夜に酒を飲み始めた時に閃くようだ。それをカードに書き留めるがたいていは役に立たず、毎日仕事をする持続の中で小説が出来上がっていく、とある。

小説を書く仕事って、地道な取り組みの積み重ねなんだ。