杉本純のブログ

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消えていく史料

朝日新聞「ルポ2020 カナリアの歌」の2019年12月31日の回は、民間で保管されている歴史の資料の廃棄が進んでいる実態を伝えるもの。いくつかの取材から成立している記事だが、いかんせん、どれくらい捨てられているのかを数値で表すのが難しいため、あくまで当事者たちの実感レベルとして「歴史が消えている」のを伝えるに留まっている。しかし、それは恐らく事実だろう。

記事では「日本史研究会」の会員や郷土史研究の担い手も少なくなった、ともあった。それは確かに歴史の危機だと思う。私としては、歴史の磯田先生や呉座先生が活躍しているし、城郭や戦国武将に異常に詳しい小学生が出てきたりしてしているから、そんなに悲観する必要もないんじゃないかとも思うのだが、そういう歴史好きの先生や子供の数自体が減少しているのだろう。

近年の断捨離ブームは、物に縛られず、過去を引きずることなく、今を自由に生きようという思想の現れだと思う。それで思い出の品を思い切って処分することも少なくない。「今」は確かに最も大切なものの一つで、過去に縛られて今を生きられないのは勿体ないことだが、「今」にしか興味がないのも困りものだろう。