杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

殺しの香り

NHKの「チコちゃんに叱られる」で、森のニオイは殺しの香り、と言っていた。人間が吸い込んでリラックスできる成分は、植物にとって天敵であるカビや細菌などを殺す効果があるらしい。

こないだの連休は信州の山に行って森の中で過ごした。思い切り深呼吸をしたのだが、やはり都会の空気とは味が違うように思った。「これが殺しの香りかな」などと思ったりした。

コンビニすらないところで他事を考えず過ごしたので、良い休息になった。そこでは日記以外の書き物をしなかったのだが、不思議なことに、しっかり休んだことがかえって新しい書き物への意欲を掻き立てることになった。

普段は都市で過ごしていて、そういう毎日の中で「書く」という孤独な作業への意欲を保ち続けるのは簡単ではない。恐らく、「書く」ための素材は都市とその周辺、つまり人間がたくさんいるところにごろごろと転がっている。それはつまり、人間との関わりの中で感じる感情の起伏、恨みつらみやそれを伴う数多の出来事に他ならない。それらは「書く」上で欠かせないものだが、それをあまりに多く抱えすぎると、心身ともに消耗し、積もって山となった塵芥に押しつぶされ、倒れてしまうだろう。

それでは意味がない。時には都市から離れ人間から離れ、森の中ででも過ごして意欲を取り戻すべきだ。

そんなことを、連休の間に感じた。殺しの香りは、私の中の色んなゴミも殺してくれたのかも知れない。

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