杉本純のブログ

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脳と創造性

武者小路実篤は、自分の頭が疲れ過ぎるのを恐れていたようだ。頭が元気だと、何かしないではいられなくなり、その気持ちが原稿を書く力になるからだそうだ。

武者小路が河出書房『文章講座 第4』(1954年)にそのような文章を寄せていたのを、Twitterで知った。調べてみたら、その文章は「僕の書く時の苦心」というタイトルであるらしいことが分かった。これはぜひ読みたいのだが、簡単には手に入らないもののようで、悔しい。

さて武者小路が言ったことは面白く、かつ私自身その通りだと思っていて、しかも、創作とか文章の作法に関してそういうことを言っていた人というと、すぐには思い出せない。大江健三郎が近いことを言っていたかも知れないが…。武者小路の時代は今ほど脳に関する知見はなかったと思うが、脳の疲労が創造行為の大敵だということに気づいていたのだ。

脳を疲労から回復させるにはとにかく睡眠が良いそうだが、武者小路はよく寝ていたのか。一方、森鷗外ショートスリーパーだったらしく、それでもあれだけ書き物をしたのだからすごい。バルザックなんかも書き出すと十数時間止まらなかったそうで、脳と創造性の関係は一筋縄ではいかなそうだ。とはいえ武者小路の言葉には頷かされるものがある。