杉本純のブログ

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クリエイターと脳

築山節『フリーズする脳』(生活人新書、2005年)は、思考や言葉が、コンピュータがフリーズしたように止まってしまうケースをいろいろと紹介していて、古い本に入るだろうが面白い。

その第七章は「クリエイティブな能力を失うとき」で、文章が思い浮かばなくなってしまったフリーライターのケースを紹介している。私自身がライターという、いわゆるクリエイターの部類に属しているので、自分のことのように読んだ。生活が単純化されすぎるとアイデアが浮かんでこなくなる、といったことが書かれていて、うぅむ、これは気をつけなきゃな…と思った。

同じ章に「クリエイティブな能力は脳機能の総合力」という見出しがあった。クリエイティブな能力とは、前頭葉の選択・判断・系列化する力や記憶を引き出す力、話す力、聞き取る力、などが一定上のレベルに鍛えられ、バランスよく使うことができるようになって初めて発揮される、という。なるほど確かにそうかも知れない、と思った。ライターでなく、小説家も同じように力を使っているのではないか。

ここで紹介されているフリーライターは、独立してある程度成功した結果、ある種の単調な生活に入ってしまい、クリエイティブな能力が失われたことになっている。なるほどそれもあるかも知れない。一方、マルチタスクの編集プロダクションで長年働き、疲弊し尽くしたライター、デザイナーなども、相当に脳疲労が蓄積してフリーズしてしまうんじゃないか、と思う。