杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

能書きなんてどうでもいいから早く書け。

スーザン・ショフネシー『小説家・ライターになれる人、なれない人』(同文書院、1998年)は、ときどき読み返すのがちょうど良い本だと思う。これはライター(書き手)が文章を「今日書く」ために必要な心構えのコツや習慣について、古今東西の人物の言葉を引用しつつ説いたもの。「今日書く」ことを阻害する要因があらゆるパターンで揃えられていて、東西の金言はショフネシーの文章と共にそれに対処するヒントを与えてくれる。ここに書いてある全ての阻害要因が一度に訪れることはないはずなので、ある要因に阻まれた時にそれに対処できる金言に接すれば良い。だから、ときどき読み返すのにちょうど良い本だと言える。

今回ぱらぱら読み返していたら、面白い金言があった。ソフォクレスの言葉である。

人は実際に行動を起こすことで、学ぶことができるのです。というのも、知っていると思っていても、実際に行動を起こしてみるまでは、それが本当かどうかが分からないからです。

これについてショフネシーが書いている中に、次のような一節がある。

 夢はよく、話のテーマになります。でも大切なのは、あなたが短編小説を書きたいと思ったかどうか、ではありません。実際に書いたかどうか、なのです。

まず行動なのである。夢というのは、酒でも飲みながらあれやりたいこれしたい、などと言うのに向いているが、実現に向けて行動しなくてはただの夢でしかなく、何の意味もないのだ。

小説も同様で、こんな話を書いてみたいな、と夢想することは自由だし楽なのだが、実際に行動に起こさない限り単なる絵空事に過ぎないので、能書きなんてどうでもいいから早く書け、ということ。

「思う」ことには価値なない。「在る」ことには相応の価値がある。小説作品を思うのではなく、在るものにすることが大切なのだ。