仙台市で唯一の地元資本の映画館だった「仙台セントラルホール」は、2018年6月30日の営業を最後に閉館した。経営していたのはセントラル劇場という合同会社だが、1979年の開館以来、経営者は三度入れ替わっていたそうだ(「仙台唯一の地元資本映画館「仙台セントラル」月末で閉館 映画離れで赤字体質加速」河北新報 ONLINE NEWS(2018.6.12))。
閉館の約一年後の2019年5月2日、同館の元映写技師と常連客だった映像作家が企画・編集したエッセイ集『セントラル劇場でみた一本の映画』(ペトラ)が刊行された。
エッセイを寄せているのは伊坂幸太郎、佐伯一麦、濱口竜介ほか、計33名の有名無名の人々だ。私は本書の存在すらまったく知らなかったのだが、佐伯に関する情報としてネットで知った。
ところが、この本は500部のみの限定発行で、東京でも販売書店が限られているとのこと。発売して一か月以上が過ぎているし、こりゃ早く動かねばならんと、販売書店の中で職場から最も近いところを見定め、会社の昼休みに急行。無事に入手した。
33人は、それぞれ「仙台セントラルホール」で上映された映画の中から一本を挙げて、その作品と映画館にまつわる思い出を語っている。佐伯は2012年5月から同ホールで上映されたアキ・カウリスマキ監督の『ル・アーヴルの靴みがき』(2011年)を挙げ、映画や同ホールと自分との関わりを述べている。
佐伯は高校時代には観た映画の記録をノートにつけていたとか、東京にいた頃からカウリスマキ監督の作品が好きでよく観ていたとか、面白い。また佐伯の妻である神田美穂は映画配給会社で宣伝に携わり、映画監督の榎本憲男とは同僚だったとも書かれていて興味深い。