杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

世界を構築する

今、新作の小説に取り組んでいるのだが、背景世界を作り込むことがやたら楽しく、本文執筆よりも夢中になっているかも知れない。

構想ばかり固めて実作を進めないのは本末転倒かも知れないが、元はといえば、本文を書いていて躓いてしまい、先を書き進められないことが多かったので、まずは「足場を固めよう」と思い着手したのである。

シナリオを学んでいた時期、登場人物の来歴やら性格やら癖やら異性の好みなどまで細かく作ると良い、と何かの本に書いてあったか誰かに教わったかしたのでやってみたが、ぜんぜん面白くもないし実際のシナリオに反映されない部分が多かったので抛り出してしまったことが何度もある。しかし現在、そのことにかなり熱を入れて取り組むようになったのだから不思議なものだ。

思うに、背景世界は滅多やたらに作り込めばいいというものではない。まず、主題やジャンルやストーリーの大まかな流れなどが決められ、次いで細部を検討していく。執筆はそのさなかに始められるか、十分に細部が決まってから着手されるか、人によってさまざまだろうけれども、すべての細部を完璧に仕上げるのは不可能だろうと思う。

そういうこともあって、実際の執筆の最中、話の流れが予め決めていた大まかな枠組みからはみ出したり、予定の方向とは違う方へ進んでしまったりする。作品の背景世界を作り込んでおくというのは、おそらくそうした事態を切り抜けるのにいくらか役に立つのではないだろうか。

私が作っている背景世界は、主人公を中心として、人物同士、あるいは人物と環境の「関係」である。AはBをどう評価しているのか、その逆はどうか。Aはどうしたいと思っていて、それに対しCはどう関わってくるのか、逆はどうなのか。また、Aが住んでいる街は現在どういう状態にあるのか、Aにとって街はどう映っていて、逆に街にとってAはどういう位置づけになるのか。などなど。

その関係の線の中に、コンフリクト(葛藤)がある。それがストーリーを展開させるポイントになると思う。