杉本純のブログ

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関わってはいけない人

週刊文春」2019年1月3日/10日新春特大号は、昨年末に買った。目当ては、ライターの田村栄治による、フォトジャーナリストの広河隆一が複数の女性にセックスを要求したりヌード撮影をしたりしたという記事だった。

この記事がどれくらい本当なのか、私は知らない。しかしこの記事には、広河が写真事務所のスタッフを罵倒していたという記述もあり、こういう人、かつて勤めた職場にいたぞ、と思ったのだ。

私が知っている人は、職場にいる周囲の人に聞こえるように部下を怒鳴り、ひどい時には殴ったり蹴ったりした。文春の記事には広河と関係のあった女性が、広河を「逆らってはいけない人」と考えていた、とあるが、私が知る人は、こちらに過失があった場合、それによって自分はひどく損をした・傷ついたみたいな言い方をして、こちらが罪悪感を抱くように仕向けるところがあった。私は一時期、なんとしてでもあの人に対する罪滅ぼしをしなくては…と自分を強く責めていたことがあり、その迷妄から脱出するのはものすごく大変だった。

女性に対しても、仕事を通して関係ができた相手を何かと理由をつけて自分の所に呼び出していた。私がその職場にいた間にけっこうな数の女性が出入りしていたが、いったいどういう関係になっていたのか…。べつに立ち入ったりはしなかったが、中にはその知人の子を妊娠した人がいた。それはそれとしても、私はどうも、いずれの女性も「逆らえない雰囲気」に押し流され、望まないながらも関係を続けているような、妙に健全ではない空気を感じていた。

私は後年、マリー=フランス・イルゴイエンヌの『モラル・ハラスメント』(紀伊國屋書店、1999年)を読み、モラル・ハラスメントをする人の特徴が知人の言動とぴったり重なっていたのを知り、驚いたものだった。

広河のことはどうとも言い切れないが、世の中には人を食い物にして何とも思わない人がいる。そういう人とは、関わってはいけない。