連載最終回である。
この作は恐らく七、八年くらい前の、社員の副業を認める企業が増えてきた、という記事が新聞の一面に載っていたのに想を得て書いたもの。ジッドや中上健次も新聞記事に着想して書いたそうだが、新聞記事はたいてい短い文章だから、その周辺の事情を想像するのに向いているのかもしれない。
またこの作品は、私がある工場で取材した人の、ダイカストの工程でアルミ湯を浴びて火傷を負った、というエピソードを元にして書いたものでもある。副業についての新聞記事と、ダイカスト工場の労働者のエピソードと、東日本大震災。あるテーマの下で複数のエピソードを組み合わせれば小説が書けることを、私はこの作品をはじめとした複数の作の執筆を通して知った。しかし出来上がりには不満が多い。