杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

インタビューは「なに」と「なぜ」

永江朗の『インタビュー術!』(講談社現代新書、2002年)は、たぶん十年近く前に読んだ。フリーライターの永江が文字通りインタビュー術について広範囲にわたり述べた本で、いろいろ参考にさせていただいた。

その中で、インタビューの核となる質問は「なに」と「なぜ」だと言っている箇所がある。

 核となる質問がある。私の場合は「なに」と「なぜ」だ。その小説はその作家にとって何なのか、音楽家にとって歌うことは何なのか。「それは何か」という問い。そして、「なぜ書いたのか」「なぜ歌うのか」。ほんとうはどんなインタビューもこの二つの問いだけあれば、そしてそれに対するちゃんとした答えさえ得られれば、もうそれで充分だ。

このくだりを読んで私はけっこう勇気づけられた。まったくその通りで、すべてのインタビューは「なに」と「なぜ」をはっきりさせるためにあると考えていいのではないかとすら思う。

それまでの私は、編集者あるいは発注者がまとめた事前の質問項目に引っ張られ、機械的にそれを問うやり方をしていた。自分の方に「なに」「なぜ」を問おうとする意識が薄かったので、質問に対し何らかの回答さえ得られればそれで満足してしまい、回答の内容をあまり理解していなくても取材を終えてしまうことがあった。内容への理解度が低いと、必ずまとめる段階で文章がつながらなくなり、苦しい思いをする。そういうことがしばしばあった。

けれども、結局インタビューは「なに」と「なぜ」しかないのだとわかってからはずいぶん楽になった。常に相手の言わんとすること=「なに」と、その背景にあるもの=「なぜ」に耳を傾けていれば、大事なフレーズを聞き逃さなくなるし、どうでもよいことは聞き流せるようになる。

「なに」と「なぜ」。インタビューをする際はこの二つのことをきちんと聞くことを忘れなければ、たいてい乗り越えていけると思う。