杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

ノンフィクションの書き方

加藤恭子編著『ノンフィクションの書き方』(はまの出版、1998年)を読んだ。

加藤は1929年東京生まれ。フランス中世文学が専門だが、伝記をはじめとしたノンフィクション作品を多数書いている。上智大学でフランス語教師として長く教鞭を執り、定年退職後は上智大のコミュニティ・カレッジ(公開学習センター)で「ノンフィクションの書き方」という講座を持っている。本書は、その2、3回生の講座をまとめたものだ。

内容は学生向けの講義と実習を交互に掲載したもので、実習の方は学生の実習作品が延々と載っているので私は飛ばして読んだ。講義の方は、テーマの見つけ方、資料の探し方、文章のまとめ方などごく基本的なことを述べていて、私としては基礎を再確認するように読ませてもらい、楽しかった。

その中に、テーマに関する資料は全て目を通すこと、とあった。私はおおいに首肯しつつ、西永良成の『『レ・ミゼラブル』の世界』(岩波新書、2017年)の「おわりに」に書いてあった、パリの国立図書館に所蔵されているユゴーの資料を読むには1日14時間費やしても20年かかるとそうだ、という箇所を思い出した。

加藤は、登場人物を傷つけるようなことはしない、と書き、そんな自分は良い書き手ではないと思う、とも書いている。そして、書き手の中には何でも書いてしまう人がいて、そういう人を尊敬してしまう、とも述べている。

私は、文章を書く以上、それによって人を傷つけてしまう可能性はあると考えていて、基本的には何事も正直に書くべきだと思っている。