杉本純のブログ

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幸田文と佐伯一麦

「完璧、といってもいい」

佐伯一麦幸田文『木』(新潮文庫、1995年)の文庫解説を執筆したことを、『Nさんの机で』(田畑書店、2022年)で知り、さっそく『木』を読みました。

『木』の単行本は、1990年に幸田が死んだ後、1992年に遺著として新潮社から刊行されました。木にまつわる随筆の集成で、それぞれの初出は「學鐙」に1971年から1984年にかけて不定期に掲載されたもの。「學鐙」は、丸善が刊行していたPR誌です。佐伯は単行本刊行後すぐに読んだらしく、解説では幸田の文章を「完璧、といってもいい」とまで称えています。

佐伯は自身の随筆などで樹木についてよく述べていますが、幸田について書いているものは私はあまり読んだ記憶がありません。しかし本書の解説を読むと、佐伯は幸田の本をかねてよく読んでいたように見えなくもない。

解説の最後で佐伯はルナールの『博物誌』にある「樹々の一家」の一節を引用していますが、佐伯の小説「木の一族」はそこから来ているのではないかと思いました。