杉本純のブログ

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『木の一族』と福田和也

福田和也『作家の値うち』(飛鳥新社、2000年)を、佐伯一麦の作品が取り上げられているので拾い読みした。

これは現代作家の作品を百点満点で評価する本だが、佐伯の作品は『ア・ルース・ボーイ』が87点、『木の一族』91点、『遠き山に日は落ちて』69点、『川筋物語』61点で、『木の一族』が最高である。

この本では90点以上は「世界文学の水準で読み得る作品。」とされ、80点以上は「近代日本文学の歴史に銘記されるべき作品。」とされている。すると『木の一族』は世界文学水準の作品、ということになるが、本書で最高なのは古井由吉の『仮往生伝試文』と村上春樹ねじまき鳥クロニクル』、石原慎太郎『わが人生の時の時』で、いずれも96点を叩き出している。

私としては佐伯は『ア・ルース・ボーイ』の方が好みだし、良いと思うが…。また、「ショート・サーキット」はランクインすらしないのだろうか、と思った。ちなみに福田は『ショート・サーキット』(講談社文芸文庫、2005年)の解説も書いているが、同書には「木の一族」も入っている。また『木の一族』(新潮文庫、1997年)の解説も福田は書いている。

作家としての佐伯の紹介文では「『私小説』という枠組みに拘泥することなく、そのエッセンスを現代に再生した作家である」とあるのだが、一体なんのことだろう。。