杉本純のブログ

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寸暇

文化庁による令和2年度「国語に関する世論調査」の結果が24日に出た。

この調査結果で私がよく見るのは間違えやすい言葉に関するところである。今年は「がぜん」と「破天荒」の意味、「寸暇を惜しまず/寸暇を惜しんで」はどちらを使うか、などがあった。

「がぜん」は本来は「急に、突然」といった意味だが、そう答えた人は23.6%に過ぎず、「とても、断然」と答えた人が67.0%もいた。

「破天荒」は「だれも成し得なかったことをすること」が本来の意味だが23.3%に過ぎず、「豪快で大胆な様子」と答えた人が65.4%もいた。

また誤用の王者「すべからく」は、本来の意味「当然、是非とも」が54.8%で、前回調査(平成22年度)の41.2%を大きく上回った。「すべて、皆」と答えた人は32.1%(前回38.5%)だから、誤用している人は減っている。よろこばしいことだが、「当然、是非とも」と「すべて、皆」の両方の意味を持つ、と答えた人が9.1%ということである。とはいえ、これでも「王者」というほど誤用が多い言葉ではなくなったとして良さそうだ。

「僅かの時間も無駄にしない様子」を「寸暇を惜しまず/寸暇を惜しんで」のどちらで表現するかでは、「惜しまず」が43.5%で、前回の57.2%から下がったが、本来の意味「惜しんで」の38.1%を上回った。ただし「惜しんで」は前回28.1%だから正しく使っている人が増えている。

その他、「知られていなかったことが、世間に知られること」を、本来の意味「明るみに出る」と答えた人は44.1%、誤用の「明るみになる」は43.0%だった。「快く承諾すること」を正しい「二つ返事」と答えた人は52.4%で前回(42.9%)からかなり良くなった。「一つ返事」と答えた人は37.4%(前回46.4%)だった。

さて「寸暇を惜しんで」だが、この言葉には大切な思い出がある。私は幼少時、母からよく「寸暇を惜しめ」と言われた。母は、私が試験に向けて勉強していた時などに、途中で満足してしまい妥協するのを許さず、そう言ったのである。

だが私は勉強も練習も好きではなく、どれも「寸暇を惜しまず(?)」中途半端だった。だらだらのほほんと生きて、大人になってしまった。だが母は正しかった。私は成人してからやっと「寸暇を惜しんで」勉学や練習をするようになった。