杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

伝言ゲーム・スタンプラリー・椅子取りゲーム

倉貫義人『管理ゼロで成果はあがる』(技術評論社、2019年)は、著者が、組織で働く個人が楽しく仕事をし、組織として圧倒的な成果を出すために試行錯誤した結果をまとめた本。著者は、ソフトウェアの開発会社・ソニックガーデンの社長であり創業者でもある。

私自身、会社という組織に属して仕事をしていて、管理とか評価とか申請・承認とかについて考える機会がけっこうあるので、興味深く読んだ。

中で、従来の大半の組織の形態であるヒエラルキー構造によって起きる問題について述べている箇所がある。問題は「伝言ゲーム」「スタンプラリー」「椅子取りゲーム」の三つ。

「伝言ゲーム」は、組織の大型化にともなって階層が増え、トップの意向が最下層の社員にきちんと伝わらないこと。「スタンプラリー」は、同じような事情から決裁の階層が深くなった結果、稟議を取ることなどが時間がかかり、良い企画も特徴のない企画にさせられてしまうこと。「椅子取りゲーム」は、昇進のポストが限られているため優秀な社員が出世できず、ひいては会社を去ってしまうこと。

いずれも過去に何度か聞いたことがある、組織というものが抱える問題だと思うが、こういう組織構造は歴史があり、かつてはそれが有効だった、とも書かれている。

本書には、創造的な仕事は管理しない方が生産的になる、と書かれている箇所がある。その通りだと思う。かつては有効だった手段が創造的な仕事をする上では邪魔になるのである。時代は変わってきている。