杉本純のブログ

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内向型人間の出世

今回は断らなかった

私の知る人の中に、勤め先で役職がついた人がいます。その人自身は、自分に「役職がついてしまった」と思っているようです。。

「ついてしまった」などと書くと恥ずかしいことをしてしまったように思えるでしょう。実際その人は、自分に役などついていいのだろうかと、どこか後ろめたい感じがしていて、かなりのぎこちなさを抱いているようです。

その人は元々、会社で出世する人間を馬鹿にしていました。いや、有り体に言うと、かなりの根っこの部分に個人主義的な考えを持っているのは今も変わらず、組織の中で役など背負うにふさわしい人間ではないと自覚しています。

その人の会社では、べつに無理に出世しなくてはならないわけではなく、役職がつく話は断ることができたようです。実際、その人は自分は役などつく器ではないと自覚していたので、数年前にそういう話を受けた時は、遠回しに断りの言葉を述べたそうです。それで、その時は役がつきませんでした。

しかし、今回は断らなかった。その人としては、前回から今回の間に意識の変化があったとのこと。自分にふさわしい立場とは思えないものの、会社からそのポストでの活躍を期待されているのだから、やれるだけやってみようということです。

内向型人間であっても…

その人は、自分を組織人とは自覚していないが、長年にわたり組織で生きてきた過程で、人間はただ組織に守られながらぶらさがっているだけでは駄目で、やはり積極的にそれなりの貢献をすることが大切だということを理解したようです。決して偉くなりたいわけではなく、組織に「貢献」するために、組織側から期待される立場になることは厭わなくなった、ということですね。

もちろん、ただ責任だけ重くなるのは不本意なことです。役がつけばそれなりの手当がつくので、それはそれで美味しくいただこうという考えのようです。

また、その人は本多信一さんの『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)を読み、その中にある、「(内向型人間は)お仲間のためにも昇進話は受けてください」という文章に触れて、役職に就くことに前向きな気持ちになったのだそうな。

「お仲間のためにも昇進話は受けてください」は、内向型人間は多くの場合、組織の中でうまくやっていくのが難しいけれど組織に貢献する能力はあるし、同じような内向型人間の同僚に生きる道を示すためにも昇進の誘いは断らない方が良い、という内容です。つまり、内向型人間が組織の中で生きていくことを前提とした文章であり、実はその人は組織の中でずっと生きていこうとは今でも思っていないのですが、それでも前向きになったのです。

内向型人間(私は今でいうHSPだと思っています)は、組織の中で活躍するのが大変な、色んな細かいことがよく気になってしまう繊細な人ですが、その人は、自分にはそういう側面があることを自覚しつつ、ひとまずはしばらく頑張ってやっていこうと思っているようです。

私は、その人の頑張りをしばらく見守りたいと思っています。