杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

だから歴史は面白い

猪瀬直樹昭和16年夏の敗戦』(中公文庫、2020年)を読んでいる。日米開戦前、戦争を始めた場合の戦局のゆくえについて、官民の若いエリートが集まりシミュレーションした「総力戦研究所」の取り組みと、その傍らで進んだ開戦までの経緯を取材した本。総力戦研究所のことはもちろん、日米開戦についても類書を読んでいないに等しい私は、読んで瞠目するばかりだった。とにかく猪瀬の語りが読ませる。面白い。

なかんづく、東條英機については本書を読む前と後とでは認識が変わり、その意味でも意義深い一冊と言えると思う。

先の大戦については今でも新資料が出てきて、NHKスペシャルなどで取り上げられている。一方、最近、子供向けの日本の歴史のマンガを読む機会があり、開戦の経緯がごく短くまとめられていたのを見た。細かい部分を断定的に書くのは専門家でも難しいだろうと思った。結論に到達するなど永遠に不可能なんだろうと思うが、だから歴史は面白いんだろうとも思う。