杉本純のブログ

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佐伯一麦『散歩歳時記』

佐伯一麦『散歩歳時記』(日本経済新聞社、2005年)を読んだ。本書はこのブログで前にも書いたが、山形新聞夕刊に「峠のたより」と題し、1995年11月から月2回連載されたエッセイを中心に、季節の話題を扱った佐伯の文章を編んだものである。

表紙には、紙飛行機の右翼の上に、ポケットに手を突っ込んで歩いている男らしい人間の姿があって、その全体が鮮やかな青色をしていて、背景の空間は白い。そんなに凝ったものとは思えないが、味わいのある表紙である。装画・装丁は柄澤齊

内容は上記の主旨を外さず、全体に、花鳥風月のことを身辺雑記を通して書いている。佐伯の伝記的事実はそこかしこに差し挟まれていて、私としては花鳥風月を愛でる文章よりもそちらの方が味わい深かった。