杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

人生は一日で変わる

先日、明石家さんまが画商として無名の藝術家の絵を売っているテレビ番組を見た。その中で、かつてヴォラールという画商がいて、その人がピカソゴッホを有名にした、などと紹介されていた。画家の人生や名誉に、画商の力は多分に関与する。物書きにとって、編集者や先輩作家の存在が大きいのと同じようなものか。

番組ではさんまがお得意のトークと押しの強さで客に絵をどんどん売っていたが、無名でお金がない新進画家の絵が売れ、あまつさえ新しい絵の注文が出されたりして、大喜びする人や、涙を流す人がいた。バラエティ番組として作られたものだが、見ていて、ああ藝術家の人生はこうして一日で変わるんだなと思った。

小説家が新人賞を取るのもそうだろう。文藝五誌の新人賞はもちろん、芥川賞直木賞などは取れば人生が変わる気がする。三島賞や野間新人賞でも、取れば勢いがつくんじゃないだろうか。そんなことを考えると、若くしてデビューできないなんてことは何でもなく、辛抱強く書き続け、発信し続けることが大事だと分かる。

一方で、藝術家の人生は一日で暗転もするんだろう。芥川賞を取った作家がアルバイト生活をしている話や、生活保護を受けているなどという話も、どこかで読んだ記憶がある。それは一日でそうなったわけではないだろうが、編集者や読者が作家を見捨てるのは一瞬のことだろうと思う。