杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

旧作の改新

何だか歴史上の事件みたいだが、これは私がいま取り組んでいる、かつて書いた小説を骨組みだけ維持しながら新しいものに書き改める挑戦のことで、まぁ私の歴史の中では一つの出来事と言えるかも知れない。

小説は書けば書くほどうまくなる、旧作なんて書き上げたら過去のものなんだから問題にせず、どんどん新しいものにチャレンジするべき、と若い頃は考えていた。今でもその考えに大きな違いはなく、こないだ一作書き上げたがその後すぐに新しい物に着手した。

かつて同人誌に参加して小説を書いていた時、ある同人から、今回の作品は欠点が残ったがいちど冷めた眼で読み直してみて、悪いと思う部分を直してみてはどうだろう、という助言を貰ったことがあった。しかし当時の私は逸る気持ちが強く、冗談じゃない、俺はすぐに次の作品に赴かなくちゃいけないんだと思っていた。

けれども、このたび旧作の改新に取り組み、直してみるのも悪くないと感じている。今回どうして改新に取り組んだかというと、新作だけでは一冊にまとめにくいので旧作と合わせて一冊にしようと考えたからだ。旧作の出来が悪いのは分かっていたので、直さなくてはならないと思って取り掛かった次第である。

改めて旧作を読んでみて、やはり自分が未熟だったと思う部分が散見され、今なら絶対にこういう書き方はしない、またはこういう視点からは書かない、と感じる部分も多く出てきた。しかし逆に、今の自分よりもずいぶん構成が巧いじゃないか、登場人物の配置などもそれほど悪くないぞ、と思わせられる部分もある。そして、そういう部分はちゃんと維持し、欠点と思う部分を直せばかなり良くなる気がしてくるのだ。

ユゴーの『レ・ミゼラブル』は「レ・ミゼール」を大々的に直して完成したのであり、旧作を改新して名作になった実例はあるのである。諦めずに取り組みたい。