杉本純のブログ

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お金のはなし6 お金と労働

資産運用とか投資というと、お金を働かせて本人は働かず何もしない、みたいに捉えられることが多いと思う。しかしそんな美味しい話などあるはずがなく、投資をする側だって、下手を打てば投資した金が吹っ飛ぶことがある。いつ、どこに、どれくらいお金を投資するかをちゃんと考え、投資した後もちゃんと投資先の動きを見て考え、適宜手を打たないと、いつの間にかお金がどんどん減り、ついに消えてしまった、なんてこともあるはずである。

バルザック「人間喜劇」セレクション第7巻 金融小説名篇集』(藤原書店、1999年)の巻末には、鹿島茂青木雄二の対談「『ナニワ金融道』とバルザック」が載っている。これが、バルザックの「金融小説」を集めたアンソロジーならではの対談になっていて面白い。

中に「金を貸したやつと借りているやつ、どっちが偉い」という見出しがあり、読むと、お金を融資する側は楽に儲かるかというと、そんなことはないのがよく分かる。

青木 例えば、商工ローンというのがあるでしょう。あれは絶対に行き詰まるんです。というのも、保証人をばっちりとっといても、一千万円まで融資して、一回目の百万円を返済してもらって、まだ残りが九百万あったときに、こういう不況で債務者も保証人もバンザイすれば破産宣告になりますよね。そしたら九百万の借金が残ってしまうわけです。ところがそういうことになりますと、商工ローンも銀行から借りてますから苦しくなってきとるんです。金貸しくらい儲かる商売はないと思ったのが、逆になってきてる。だからいまだったら借りているものが強いですよ。
鹿島 ニュシンゲンも、金をみんなから預かっているわけで、だからみんなから金を借りてるようなものです。でも、この借りてる方が強い。少し借りると弱いけど、いっぱい借りると強くなる。
青木 それはダイエーそのものですね。結局のところ、金貸しが一番いい商売やと思ったんでしょう。でもマルクスを読んでもわかるけど、基本は労働ということになると思う。労働がなかったら金貸しは成り立たん。そこにぼくは気づいたんです。労働をおろそかにすると、銀行といえども街金といえども成り立たない。単純に考えてもみんなが金貸しやったら一体誰が借りに来るのですか。
 だからいまサラリーローンでも無人機を減らしていっているんです。不景気になるから慎重に審査をやらないと、貸倒ればかりになってくる。土台になる経済がへたってくると、貸した方も痛くなる。

「ニュシンゲン」はバルザックの小説『ニュシンゲン銀行』の登場人物だが、お金をちゃんと働かせてちゃんと儲けるには、本人もちゃんと労働をしなくては…つまり頭をよく働かせなくては駄目。まぁ当たり前だと思う。

美味しい話なんて、そうそうないと思った方が良い。