杉本純のブログ

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マルチタスクと多能工

近年、ものづくりの世界でよく「多能工化」ということが言われている。製造業などの工程の中で、一人が単一の業務をこなすのではなく複数の業務をこなせるようにする、といった意味で使われていることが多い(厳密に正確な意味は知らない)。

一方で、最近は「マルチタスクは脳の働きを阻害してしまうので良くない」といったことをよく見聞きする。「マルチタスク」とは同時に複数の動作をすることを指すらしいが、実際には同時進行している複数のタスクをこなしていくため頻繁に「タスクスイッチング」することを意味するらしく、それは脳が疲れやすいのだそうだ。

編集プロダクションの業務はまさしくマルチタスクであり、上記のことは世間で言われていることだけど、編プロで働いている私自身が身をもって感じていることでもある。

マルチタスクができない人は編プロの世界では向いていないと言われているし、精神力と体力がひときわ求められる仕事だとも言われる。私は第一次産業やサービス業に従事する人に比べたら編プロの仕事なんて楽なもんだと、仕事が大変だと思う自分の傲慢を戒めていたが、タスクスイッチングが日常的で脳疲れも実感している現在は、考えが変わってきている。

さて、多能工というのはマルチタスクとイコールだろうか。イコールだとしたら、多能工化は作業者の脳を圧迫するので推奨できないことになる。イコールでないとしたら、ひとまず推進しても良いことになるだろう。

製造ラインに入った経験は少ないので何とも言えないが、少なくとも編プロのマルチタスクについては、若くて元気があって、物事をあまり深く考えずホイホイ動く人が向いていると思っている。あるていど教養が身についていて、自分なりに物を書いたり作ったりしていきたいと考えている人であれば、独立するなりして自分に合う環境でじっくり仕事に打ち込むようになるのではないか。むろん独立して自分の思うような形で仕事ができるようになる人は多くはないだろうが。