経営者の話によく出てくるのが、我が社の収益の柱は〇〇、△△、▽▽だ、といった事業ポートフォリオに関する話題だ。もちろん三本柱でなく四本、五本の場合もあるし二本の時もある。
今期、〇〇は調子が良くて収益を伸ばしたが、△△はマイナス、▽▽は横ばいで、〇〇が牽引して全体が伸びた、などということはよく耳にする。要するに、単一の事業だけを収益源としていては事業環境が刻々と変化する中で安定的にやっていくことが難しく、下手をすると倒産の危険性もあるから、リスクヘッジも兼ねて複数の収益源を用意してそれぞれにリソースを分散するのが良い、ということだろう。それは、企業経営をやっていく上では当然の思考なのだと思う。
ところで、それは個人事業主とかフリーランスをやる上でも重要な考え方ではないか。そんな風にふと思った。
堀江貴文の『多動力』(幻冬舎、2017年)には、肩書を三つ持つことでその人の希少価値が高くなると書かれていたし、『多動力』で紹介されているように藤原和博の『藤原先生、これからの働き方について教えてください。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2015年)にも同じことが書かれている。
つまりこういうことだ。肩書(つまり得意分野や専門分野)が複数あれば、ある肩書でやっている仕事がボツになっても別の肩書での仕事をやる時間に回せるし、ある肩書でのお客さんから別の肩書での仕事を頼まれるという相乗効果をもたらすこともある、ということ。それって、上に書いた企業の収益構造そのものではないか。
カメラマンとライターを両方やっている人もいるし、ライターと編集者を両方こなしている人もいる。それはまだ近接した職種の融合だが、中には社労士とプロのヨーヨープレイヤーをやっている人や、税理士とダンス教室講師をやっている人もいるようだ。そういうのは強いと思う。個人事業主とかフリーランスをやる上での収益の柱は、管理できる範囲で複数ある方が良いと思う。