杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

苦闘は続く。

高橋一清『芥川賞直木賞をとる!』(河出文庫、2015年)は、多くの作家のデビューに立ち会った文藝春秋の元編集者による小説の書き方本である。編集者として長年作家に寄り添い、創作に関わってきた人の言葉であるだけに実に説得力があり、特に、書き手がこういう苦境に陥った場合は…などと実例を出して対処法を述べるところは私のことを指摘されているように思えてくる。

初めて読んだのはずいぶん前で、折に触れてぱらぱら読み返しているのだが、先日、読み返していたら103ページの「あなたが書き終えられない理由」が目に留まった。

作家は少なからず、書き出した小説を中途で抛り出してしまうのだそうだ。途中まで書いてみて読み返した時、「これは自分の作品じゃない」と落ち込んだり、駄目だと思ってしまう人が多いと言う。そんな時、高橋氏は必ず、まずは最後まで書き切るよう言うとのことである。

自分が描いているストーリーを面白くないと感じ、なお最後まで書きとおすのは辛いことだ。私などは往々にしてこの辛さに負けてしまい、これまで何遍も書きかけのまま抛り出してしまった。これでは駄目である。やはり、最後まで書き通さなくては。

苦闘は続く。どこまでも。