映画学校の演出ゼミで教わった映画監督の言葉で、今も覚えているものがある。
「リハーサルではなるべく多くの人から意見を聞け。しかしいざ本番となったら誰の言うことも聞くな」
これは映画監督という仕事の厳しさを物語るだろうし、一人の人間としてものを考える際の示唆にもなると思う。
たしかにそうだ。例えば高校卒業や大学卒業、あるいは結婚など人生の岐路に差し掛かって自分の行く先を考える時は、なるべく多くの人から意見や見解を聞かせてもらうのが良いと思う。それによって新しい可能性に気づくし、それまで自分が考えていたことの正しさ、あるいは盲点を発見する効果もあるだろう。
しかし、いざ決断という時になったら、誰の言うことも聞いてはいけない。他人の意見はそういう時には単なるノイズでしかなく、判断力を鈍らせてしまう。たった一人、孤独になり、後悔しない最良の決断ができるよう心を静かにすることが大切だと思う。
だから、そういう時、周囲にいる人はなるべく当人にとって何がプラスになるかを考慮し、適切な助言だけをして後は放っておくのが良いのではないだろうか。そうすれば、悩む当人は助言をもらい、一人で判断する環境も得ることができる。