杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

小谷野敦先生の『谷崎潤一郎伝』に、谷崎は売春について、誘われれば行かないことはなかったが、本心では得体の知れない娼婦を極力相手にしたくなかったのだろうと述べられている。「雪後庵夜話」の、誘われ連れて行かれるものの友達の手前面白そうにしつつ内心は面白くなかった、という意味の箇所も引用されている。

私も過去に数度、友人に風俗に行くぞと連れて行かれそうになったが、何かと理由をつけて断っていた。断りにくい状況でも、金が足りなかったりして結局行かないことになったらひと安心したものである。
谷崎と私の心情に共通点があるかどうか、わからないが、少なくとも私としては、女くらい買えなくちゃ男じゃない(売春と風俗は違うのだろうが同じようなものとして捉えていた)、という通念めいたものがあり、それを立派に実行したいという願望がありつつ、それが実現しなかったらホッとしていたのである。
ところが、酒に酔うと勢いがついてくるのか、ようし女を買おうという気になったものだ。恩師に酒をおごられベロベロになった時など、電話して風俗嬢を呼びましょうなどとよく言っていた。これも実現しなかったが、もし本当に知りもしない生身の女と何かすることになるとなれば、怖気づいていたに違いない。