こないだあるライターから、どんな意識で文章を書いているか、という質問を受けた。そのライターは私以外のライターにも同じことを聞いたらしく、書く対象に憑依する、とか、彫り物を彫る、などと回答されたと言っていた。
私は「織物を織るような感覚」と答えた。私はかねて、ストーリーを叙述する経糸と、テーマの深みを付与する描写という緯糸が文章を構成する大きな要素と考えているから。その経糸と緯糸を上手く織り交ぜることで、読み応えのある面白い記事を織り上げられると思っている。そのことは小説はもちろんのこと、取材記事でも随筆でも、あらゆる文章にだいたい当てはまるのではないかと思う。