朝日新聞の土曜版「be」に島田雅彦が寄稿していて、島田は「悪い奴ほどよく眠るといいますが」と書き、自分は一日10時間ほど眠ると書いている。
「悪い奴ほどよく眠る」は黒澤明の映画のタイトルだが、眠れば脳が良い状態に保たれるので、悪だくみをするのにも良いのだろう。対義語を設定するなら「善い奴ほどよく起きている」になるか。
かなり広い意味で、正直者や善人は損をしやすいと言えば、ちゃらんぽらんで自分勝手な人間は得をしやすい、と言えそうだ。実際、社会に出て働いてみると、真面目で正直者が必ずしも得をしているとは思えないことが多く、長時間労働や深夜残業などをして「よく起きている」。他方、ちゃらんぽらんで自己中心的な奴ほどグーグーと「よく眠っている」。それでいて意外や意外、仕事では成功を収めていたりして、そこら辺は脳のことと関連がありそうな気がしなくもない。「悪い奴」とは、犯罪者ではなく、あまり他人のことを考えない自分本位の人間を指すのかも知れない。それならば皆、「悪い奴ほどよく眠る」を自分で実践してみるといいのではないか。