杉本純のブログ

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佐伯一麦と「Eさん」

秋闌

朝日新聞10月12日朝刊31面に、佐伯一麦のエッセイ「想 ケヤキのハンモック」が掲載されています。

4月13日に掲載された「耕せど 風は冷たい春」、7月13日の「夏の夕方 感じる水の恵み」に続く第三回です。今回は「雨を憂い 草と戦い 秋が来た」で、彼岸花が咲く季節になったことから書き起こされ、東日本大震災から現地再建をして農業をしている「Eさん」という知人のエピソードが語られます。

佐伯が現在「新潮」に連載している連作「ミチノオク」を感じさせる、土地とそこに住む人間、その人間の記憶や願いを重層的に述べる語り方は、いつもながら薄味ではあるものの味わいがあります。カレル・チャペックの文章からの引用もあり、佐伯独自の文体ともいえるかもしれません(褒めすぎ)。

私の家の近所の公園でも、黄葉が見応えあるものになってきました。秋闌です。