杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

面白がったもん勝ち

ヤマザキマリ『仕事にしばられない生き方』(小学館新書、2018年)の第5章「仕事とお金にしばられない生き方」には、高価な家具や楽器をよく買っていたらしいヤマザキの母親のエピソードが紹介されている。

ヤマザキは高いお金を支払う母親を見て騙されていると思っていたが、一方で、そんな母親を、世間知らずだとかお人よしだとか思ったわけでもなかったらしい。母親は、その物が欲しいわけではないが、売りつけてくる人の人柄にほだされて買ってしまっていたんじゃないか、と述べている。

 よし、わかった、騙されたことにしてあげる――。
 昔から、お金なんて、なくてナンボと思ってきた人です。いったん出したからには、あとはもう気持ちの問題で「騙されたっていいわ」とでも思ってなきゃ、こんなこと、そうしょっちゅう、できないですよ。
 あの母にかかると、たとえ相手が詐欺師だろうと「楽しかったわ。ありがとう」、騙したつもりで騙されていたのは、相手の方かもしれません。
「だって、いい人だったのよ」
 一発逆転。損して得とれ。
 金は天下の回りものというけれど、人生はどんな時も面白がったもん勝ち。

すごい人だなぁ。

私は無駄なものにはお金を使いたくない方だし、高価なものを買ったらそれだけの悦びを得たいと思うが、究極のことを言えば、たしかにお金はいちど手放したら執着しない方が得だろう。私はこの母親ほどの境地には到達できないと思うが、人生は「面白がったもん勝ち」だと思う。