杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

その船出は本気か

「男の船出を邪魔する理由がどこにある」とは、漫画「ONE PIECE」のセリフである。海賊ルフィが偉大なる航路(グランドライン)に入ろうとする時に海軍のスモーカーに捕らえられそうになり、革命家であり父である(と後に分かる)ドラゴンに助けられるが、なぜルフィに手を貸す!と言ったスモーカーに、ドラゴンがそう言うのである。

これは良いセリフだと思う。それはそれとして、この言葉にまつわる現実世界の事情について、つらつら考えた。

ドラゴンとルフィは父と息子の関係なので、まぁ男同士であればそう言うのは当たり前のように思える。が、現実世界では、近親者が当事者を気遣うあまりその「船出」を阻止しようとすることがあるように思う。

その最たるものが「嫁ブロック」ではないか。転職や独立をしようとする夫を許さず、ダメと言い続けて、果ては意欲を萎えさせてしまう。あるいは、過保護な親が子供の冒険の機会を奪う、というのもよく聞く。これは、男同士でもあることだろう。

いずれも、一見すると相手のためを思った上での勇敢な阻止であり、良い行為であるように思える。実際、命知らずの若い男の無謀な挑戦を止めることで、当人が自らを見つめ直して成長するきっかけにつながる、といったことはあると思うからだ。

一方で、嫁ブロックやヘリコプターペアレントなどによって、夫が生きる意欲をなくして鬱になる、子供が未成熟のまま大人になる、といったこともあるだろうし、それはそれで深刻な問題だと思う。

男(に限らず身近な大切な人)の船出を送り出すのが良いのか、止めるのが良いか、明確な答えはないのだろう。挑戦者が無謀なのか勇敢なのかが大きな分かれ目のように思えるが、その線引きは困難である。無謀とも言える挑戦をしなくてはならないことも、あるだろう。時期尚早だと判断して先送りにするのも一つの手だが、いくら準備したって完璧にはならないのでどこかで船出しなくてはならない、それなら早い方が良いとも言える。かといって、手当り次第に何でもやるのも違う気がする。

しかしいずれにせよ、近親者に阻止された程度で船出を止めるようなら、その船出は本気じゃない、と思う。本気なら、きっと近親者を納得させられるし、場面に応じて慎重になることもできるだろう。