杉本純のブログ

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創作雑記24 情熱は持続するか

着想はするけれど、構想を固めるまでに至らず、けっきょく雲散霧消するごとく消えていった小説の企画は、少なくない。いや、消えてはいないけれど、古い創作ノートのどこかにメモが残っているだけでほとんど忘れてしまったような小説が、けっこうあるのである。

最初は、やはりあるとき強烈な感情が湧いてきて、よぉし書いてやる!という具合に猛然と主題や構成を書き始めるのだが、それ自体が「書く」行為になっていて、執筆活動の根本的な活力源となる怒りだとか怨恨だとかが、長期間にわたって持続できない。だから、本文をちょっと書き始めることができたとしても、続かない。線香花火が消えるように熱意が消えてしまう。

というのはやはり、他に職業を持って生きていると、仕事の諸事雑務を処理しなくてはならないからだろう。一週間の大半の時間をその作業に費やさなくてはならない。小説の元になる情熱は、心のどこかにひとまず沈静化させて保管しておかなくてはならないのだ。一人になって執筆に向かう時間ができた時にだけ、その保管庫から引っ張り出してきてまた猛然と奮い立つ、というのは、口で言うほど楽ではない。