杉本純のブログ

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野暮な私小説

文學界」に連載中の西村賢太「雨滴は続く」の第三十四回(2020年12月号)に、私小説を書く主人公の作風を「野暮」だと書いているところがある。

同じ私小説でも尚と軽んじられるタイプの方の、野暮な作風でもある。月に複数篇どころか、ヘタしたら年に一作を採ってもらえるかどうかも覚束ぬところだろう。

このくだりについて、では野暮でない方の作風をする私小説は誰かというと、それは佐伯一麦ではないか、と言っていた人がいた。恐らくそうだろうと私も思う。もしくは車谷長吉かな、あるいは過去の著名な作家の私小説作品を指すのかな、などとつらつら考えた。

上記引用と同じページに「ありき」が使われている箇所があるのだが、これはたぶん誤用である。微妙だが。