杉本純のブログ

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正面突破

社会人になってもワナビを続けている人にとって辛いのは、社会人としての一定の義務を果たしながら目標を追い掛けること、ではないか。

これは、下手をすれば永遠に続く挑戦の道で、時間が経てば経つほど、自分より若い人が自分より早く「なりたい者」になる例が出てきたりして、憤懣と焦燥と怨恨とで頭がおかしくなりそうになるので本当に辛い。ワナビをやめてしまえば一気に楽になるのだが、そうは問屋が卸さない。それまでの目標にきっぱりと見切りをつけて新たな人生を踏み出せなければ、ずるずるとワナビ道を歩み続けることになる。こうなるともう立派な「こじらせワナビ」で、人間関係や生活も息苦しくなってくる。

人間は楽な道を選びたがるもので、ワナビとしての焦燥に耐えられなくなってくると、つい本当の目標ではない小さな別の道を拵えて、避難するようにそちらへ急いで進んでいこうとする。

例えば、会社勤めをしながら小説家になるのは楽な道ではない。しかし、だからといって会社を辞めてフリーランスになるとか、もっと楽な会社に転職するとかいうのはたぶん無駄である。本人は本当は小説家になりたいと思っているからだ。フリーランスになりたい、あの会社で働きたい、などという強い思いがあれば独立も転職もけっこうだろうが、大きな目標を追っている今の辛い状況から逃れるために安易な妥協策に走るのは、結局は逃亡でしかないだろう。そんなことをすれば、新天地でも必ず同じ壁にぶち当たり、また別の逃げ道を探すことになるに違いない。

かつて私の先生は「物事は正面突破しかない」と言っていたが、その通りだと強く思う。