杉本純のブログ

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最初の記憶

佐伯一麦『月を見あげて 第三集』(河北新報出版センター、2015年)の「箒三兄弟」には、佐伯の最初の記憶について書いてある箇所がある。

 私は、子供の頃から箒が好きで、何しろ一番はじめの記憶が、庭箒を持って庭を掃いているというものである。ようやく歩けるようになったばかりで、胸ほどある箒にしがみつき、きれいに掃くというよりも、振り回されてかえって掃き散らしていく、といったものだっただろう。てんでばらばらに箒目を付けながら。

「歩けるようになったばかり」というと、生後一年経たないくらいで、記憶が始まる時期としてはかなり早い方ではないだろうか。三島由紀夫仮面の告白』には、主人公が、生まれた時の光景を覚えている、などと書かれているが、本当にそんなことがあるのだろうか…。ちなみに私の最初の記憶は恐らく四歳ごろ、親の後ろ髪を掴んで叱られる、というもので、叱られて恐怖を感じたのをぼんやりと覚えている。