杉本純のブログ

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快楽主義の巨人

澁澤龍彦の『快楽主義の哲学』(文春文庫、1996年)は大学生の時に知人に教えられて読んだ。澁澤にしてはくだけた語り口のエッセイで、当時は面白く読んだ記憶がある。しかし澁澤は本書を自分の著作集に加えることを嫌がったという話があったそうだ。

私は最近、ビジネス本とかビジネスマン向けの動画に接することが多いのだが、優れたビジネスパーソンや経営者の思考法や行動法について学ぶと、それって『快楽主義の哲学』に書いてあったことと共通しているな、と思うことがある。『快楽主義の哲学』には「快楽主義の巨人たち」という章があり、澁澤が考える快楽主義を大いに実践した歴史上の人物を紹介しているのだが、その冒頭にこう記されている。

彼らはいずれも、高い知性と、洗練された美意識と、きっぱりとした決断力と、エネルギッシュな行動力の持ち主でありました。

この章で紹介されている「巨人」とは、ディオゲネス李白、アレティノ、カサノヴァ、サド、ゲーテ、サヴァラン、ワイルド、ジャリ、そしてコクトーと、文学者が多いのだが、たしかにこの人たちには「高い知性」「洗練された美意識」「きっぱりとした決断力」「エネルギッシュな行動力」があると感じる。

そして、この人たちは一般的に「ビジネスパーソン」という言葉で括られることはないが、引用した四つの要素は、私が上記の通り最近よく接する動画や本で言われている優れたビジネスパーソンの条件に当てはまっている気がする。ビジネスだろうが文学だろうが何だろうが、仕事をがんがんやってしまう人には共通する要素があるのかも知れない。